月ノ下 狸櫻 のブログ

爽やかで前向きな気持ちになれる話が好き

パラダイス学院留学生委員長アリス(60-06)

【第2章】 パラダイス学院日本復興委員会
「うーん、意味わからん」
「そうだよな」
 隼人の反応は思ったとおりだった。
「まあ、でも、なんとなくわかったことがある」
「何がだよ」
「要はあれだ。運営委員会の事務局と言えば、役員の下僕みたいなものだろ。まあ、アリスとやらは頭はいいのかもしれないが、手足となって動いてくれる人がほしかった。見知らぬ日本の地で、しかも三年後は帰国することが決まっている。そんな中で、学院生活を無難に楽しもうとすれば人畜無害なおまえみたいなやつを側に置いておくのも悪い選択ではない」
「じゃあ、単に事務局をお願いしますと言えばいいだけだろ、なんでボーイフレンドとか言い出すんだ」
「まあ、リップサービスってやつだろ。単に事務局では本当に下僕みたいなもんだからな。肉体関係も持たず、三年後にはお別れが規程路線のボーイフレンドなんて、都合のいいこじつけだろう」
「三年後にお別れするとは言っていない」
 あえてここで肉体関係なんて言い出す隼人に若干の不愉快さを感じなくもなかったし、そういう意味ではアリスも同じだ。
「じゃあまさか、アメリカまで追いかけていくつもりか。日本犬、ワンワン!」
 隼人は話を飛躍させながら冷やかしてきた。
「馬鹿にするなよ。それに、なんだろう。少なくとも言葉に嘘はないような気がする。そんなに悪気はないだろう」
「おまえ、本気になっちゃったの?いや、どうなんだろうね。少なくもソリタリー・バイオテック社は知ってるよね。いや、無理だって、もう、格が違いすぎるからさ俺らと」
「ソリタリー・バイオテック社?」
「知らないのか」
「おまえ知ってるの?」
「ああ、アメリカでも古株の非上場で世襲制の製薬会社なんだが、先代の社長、つまりアリスの父親の代に遺伝子研究で大当たりしてな、たいぶ儲けたらしい。ただ、新型コロナウイルスワクチンの開発に出遅れて、その責任を取ったのか嫌になったのかわからないが、投げ出したのかのように、突然辞任して、今はアリスの長兄が社長だそうだ。ちなみに、アリスは9人兄弟姉妹の7番目で母親は、三人だったか四人だったかな。細かいところは忘れたが、まあ、そんな感じだ。アメリカでも一流の製薬会社でトップから10本の指、、、には入らないかもしれないが、それに準じる大企業だそうだ。そんな会社のご令嬢ってわけだ。そう考えると特別待遇もよくわかるし、むしろ、よくぞこんな田舎の学院に来てくれたって感じだよな」
「随分詳しいじゃねーか」
「ああ、さっき調べたばかりだからな。いや、入学式のアリスの姿がまぶしくてな、さっきオカズにさせてもらおうと思って画像検索から始めたところだ。ついでに、あそこまで美人なんだから、何かネットに人となりか何か出ていないかと思って調べてみたんだ。そうしたら、出るわ出るわ、、、難しい情報が。はっきり言って英語で書かれているから、ほとんど意味がわからないのだが、自動翻訳機を通すと、多分、製薬会社の取り組みとかイメージアップ戦略か何かかな。家族で微笑ましく地域行事なんかに参加している様子なんか写真付きでアップされているんだ。これなんか見てみろよ、夏のパーティかなんかの写真だけど、ほら、ほとんど水着姿だろ、いい成長してるよな。これは今晩の、、、」
 僕は、ここで咳払いをした。